個性(パーソナリティ)の構造
人間の個性は、単純で平面的なものではないことは、誰もが感じているところでありましょう。「堅物で気難しい人だと思っていたけど、意外と剽軽な人だ」とか「いい人だけどなんとなく暗い」といったようにまったく正反対の評価になったりします。
個性(パーソナリティ)は、様々な要素が絡み合い、幾重にも積み重なった立体的で複雑な構造をしております。(図‐3)外面的にその人の言動となって現れるものから、内面に意識的・無意識的に隠されたものまですべてひっくるめて個性(パーソナリティ)といいます。
個性(パーソナリティ)は、図‐3のように二つに分かれます。一つは、先天的な部分です。それがさらに二つに分かれ、心の最も深い部分、遺伝的にもって生まれた性分で、気質と呼ばれる部分と、その上に、3歳くらいまでに親(特に母親)との触れ合いの中で形成される性格と呼ばれる部分が積み重なります。いわば、「三つ子の魂百まで」と言われるもので、この二つの部分を合わせて先天的性格と呼んでいます。
もう一つは、後天的な部分で、態度と役割行動の二つの部分からなります。態度は性格の上に重なって、習慣やクセ、周囲からの刺激に対するその人特有の反応の仕方として現れます。役割行動はパーソナリティの最も外側にあって、先生は先生らしく、社長は社長らしくといった、社会的・組織的な期待や要請・強制、それを受けて自らが演じるという演技的なものも含みます。名刺の肩書きがその象徴で、いわゆるタテマエの部分です。われわれは職場や公式の場面では、このタテマエの部分で人間関係を作っています。本来ならば先天的な気質や性格のままで生活できればストレスもなく楽でいいのでしょうが、社会生活を営む上では、それでは許されないことが多く、いわゆるホンネを隠してタテマエで立ち回るということになります。先天的な気質や性格を態度が補完し、役割行動が規制をかける、ということになります。
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