一隅を照らす

 この小論は、企業と人間の問題を中心テーマとしている。PIとは、パーソナル・アイデンティティのことで、詳しくは本文で述べるが、簡単に言うと、自分の役割を自覚し、「自分はどうあるべきか」「何をなすべきか」を明確にし、その実現のために自己啓発、自己研鑽をして、「魅力ある人魅力ある企業づくり」を目指し、働く人の幸福と企業の繁栄を実現していこうという考え方であり、生き方である。

それぞれが与えられた役割をしっかり果たす、伝教大師が仰った「一隅を照らす」ということである。

 

「自分の役割を果たす」ということはどういうことかというと、「世のため、人のために働く」ことであり、自分のハタラキを「与える」ということである。個人として、働き人として、管理者として、経営者として、あるいは企業として、国家として、己の役割を果たすことをいう。

 

 ところが現実には、これと逆に、自分さえよければ、わが社さえよければ、といったことがまことに多くみられる。このような「我が儘」は、「奪う(関係性を断つ)」ことになり、それがいずれ自分に返ってくることとなり、幸福、繁栄につながらないばかりか、破壊、滅亡へと導くのである。ガン細胞がそうであるように、自我(エゴ)の主張ばかりして、他の細胞と一切協調せず、自らの細胞のみを増殖させ、全体のバランスを壊し、ついには自らの生命そのものをも奪ってしまうのである。

 

 このような現象が、産業界では、リコール隠し、食品偽装といった問題、政界では、官製談合、贈収賄問題、国家間では、民族紛争、人間間では、親殺し、子殺しをはじめとする人間関係の問題、人間と自然・地球との関係においては、地球温暖化による異常気象等々数多くみられるのは非常に残念である。

 今一度、企業も人もすべて原点に返り、PI発想をすることが必要ではないか、それが真の幸福、繁栄につながるのだと気づいてほしいと願い、したためたものである。